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濃縮・蒸留用途

濃縮・蒸留用途

 

濃縮、蒸留、減容化などに使われるヒートポンプには2つのタイプがあります。

一つは廃熱と冷媒を熱交換し、冷媒を介して蒸気を作るタイプの「蒸気ヒートポンプ」と、もう一つは廃蒸気を圧縮機で直接再圧縮して昇温する「MVR(Mechanical Vapor Recompression)」と呼ばれるタイプです。

蒸気ヒートポンプ」の場合は、高温ヒートポンプとシステム構成が類似していることから、適用方法も似ており、より高温の廃熱を使って蒸気を生成するヒートポンプです。

それに対して「MVR」は、冷媒を介さないで直接蒸気を圧縮するため効率は良くなりますが、直接取り扱う上での課題もあり、適用の考え方が大幅に異なります。どちらが良いかはケースバイケースとなります。

 

必要加熱容量の算定

燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い

燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。

 【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW] =日給湯負荷[kWh/日] ÷ヒートポンプ運転時間[h]

 

 

 

MVR検討の5つのポイント

MVR検討の際には、溶質の性状を十分に把握し、それに対応した装置を計画することが重要です。主に、以下の5つの点に注意をして計画します。

 

①スケーリング(汚れ)

汚れはメンテナンス性に関係します。汚れる要因であるスケール成分とその濃度を把握し、薬剤で除去可能かなど、予め薬液洗浄の効果を確認しておく必要があります。

 

②材質選定

加熱装置ですので、材質選定は最も重要なポイントといえます。腐食しないよう溶質やその濃度に応じて、適切な材質を選定します(特に酸性の低沸点物など)。

 

③発泡性

泡立ちが激しい液の場合は、原液成分を含んだ泡が蒸気と共に移行してしまうため、泡を制する機構を設ける必要があります。

 

④沸点上昇

溶液の濃度が上がると沸点が上昇するため、沸点上昇度を把握することは圧縮機の選定に重要な圧縮温度を把握するキーポイントになります。

 

⑤蒸留水水質

蒸留水の水質は、原液成分に依存するので、水の回収、放流といった目的に適合するかどうかは事前に確認しておく必要があります。

これらのポイントを押さえるため、サンプル液を用いた試験を実施し事前に確認します。

 

 

 沸点上昇と圧縮温度の選定

MVRは圧縮することによって昇温する装置ですので、沸点上昇の把握と圧縮温度の選定は、設計上最も重要な要素になります。沸点上昇と圧縮温度の関係は通常以下となります。

【各温度の関係】 圧縮温度=沸点上昇+加熱温度差ΔT

沸点上昇は溶液濃度の上昇につれて右肩上がりに高くなります。沸点上昇が低いほど圧縮に必要な温度差は小さくなり、消費電力が小さくなります。従って、沸点上昇が小さいほど省エネ性に優れた装置導入が期待されます。

 

 

 一方、加熱温度差を大きくすると、消費電力は大きくなりますが加熱ヒータの伝熱面積は小さくすることができ、両者の関係を踏まえて最適な設計ポイントを決めることになります。また、圧縮温度によって最適な圧縮機も異なります。