洗浄・給湯・殺菌用途
洗浄、給湯、殺菌用途はヒートポンプの導入が進んでいる用途の一つで、食品製造業をはじめ、機械関連、電子デバイス等、多くの分野で導入されています。
加熱温度としては、食品製造業では仕込み用の給湯や殺菌を目的とする80℃以上での高温利用と、洗浄などに45~65℃で使用するケースが多く、機械部品の洗浄などでは60~70℃といった比較的低い温度で利用されています。
加熱方式としては給湯利用を中心に一過式が多く、設計ポイントとしては、業務用の給湯利用と類似している点が多くあります。
主な洗浄、給湯、殺菌用途 | |
◎CIP洗浄 ◎食品製造装置の洗浄・殺菌 ◎飲料製造装置の洗浄・殺菌 ◎自動車部品洗浄(ブレーキディスク) ◎純水、超純水の加温 ◎調理器具洗浄、調理用温水 |
給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方と留意点
燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い
燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。
【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW] =日給湯負荷[kWh/日] ÷ヒートポンプ運転時間[h]
負荷特性とシステム構成
ヒートポンプ式による最適なシステム構成は負荷特性によって大きく異なり、主に負荷の発生する時間帯と負荷変動の大きさで選択されます。
- 負荷の発生する時間が昼間が主となる場合:「夜間貯湯方式」を考慮し、それ以外は「ベース運転方式」となります。
- 日間、季節間の負荷変動が大きい場合:負荷を全量ヒートポンプで対応するとなるとヒートポンプの稼働時間が低下し、貯湯タンクからの放熱量が増加するなど経済性が悪化するため、変動負荷の場合はボイラーとの「ハイブリッド給湯方式」を考慮することになります。
ヒートポンプは夜間運転して、昼間の給湯負荷に対応 | ||
昼夜の給湯負荷(昼>夜)に対して、夜間に昼間の負荷を見越したヒートポンプ運転を行い全日の給湯負荷に対応 | ||
ヒートポンプでは、全給湯負荷の中で、安定して必要となる部分に対応し、ピーク等については他熱源を併用して対応 |
システム構成検討時のポイント
- 給湯負荷の正確な把握
負荷特性でシステム構成が大きく影響を受けるため、正確な負荷想定が重要となります。
負荷想定が難しい場合は、最初からハイブリッド給湯を選択します。
- 適切なヒートポンプ容量と貯湯タンク容量の選定
ヒートポンプ容量を大きくすると環境性やランニングコストは向上しますが、イニシャルコストが大きくなり、設備稼働率の低下を招きます。
ハイブリッド給湯とする場合は、年間最大給湯負荷(一般的には冬場)ではなく、稼働時間を確保できるポイントで容量選択をすることが重要となります。 また、貯湯タンク容量を過大に選定すると、低負荷時の放熱ロス増大の要因となります。
検討フロー
ステップ1 | ステップ2 | ステップ3 | ||
給湯負荷の想定 | システム構成の選択 | ヒートポンプ容量 貯湯タンク容量 の選定 |
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◎日給湯負荷 ◎時刻別給湯負荷 ◎最大給湯負荷 等 |
「夜間貯湯方式」 「ベース運転方式」 「ハイブリッド給湯方式」 |
◎給湯バランス図の作成 ◎設置スペースの有無 ◎最大負荷日での検証 等 |